医療法人社団 ありがとうの風 在宅療養診療所 くまさんクリニック

適切な意思決定支援に関する指針

1.目的と理念

ご本人の意思を確認し、その人が「大事にしてきたこと、大切にしたいこと」を重視した医療を提供し、希望する生活を可能な限り支えるため、生きる力を引き出し、最後まで本人らしい生き方、人生を支えることを目的にします。

疾患や障がいの軌跡(疾患や障がいを抱えて生活してきた経過)を踏まえて、さまざまな状態に応じた支援とそれらの移行期の支援について、外来・在宅医療を通じて対応します。

病状の変化に迅速に対応しつつ、複雑な病状と障がい、からだやこころの辛さへの総合的な医療・ケアを提供します。

医療、ケアと生活支援の統合的アプローチ、本人とご家族を主体とするチームアプローチを多職種と共に行っていきます。

2. 在宅療養に即した意思決定支援の留意点

できるだけ慣れ親しんだ人や環境に配慮して意思決定支援を行います。医療・ケアの希望の合意内容は、その背景や理由に加え、人生観や価値観(大事にしてきたこと、大切にしたいこと)に関する情報も含めて、診療録に記録します。
必要に応じ、また救急搬送される場合に備えて、内容が確認できるように家族等と共有します。

意思決定支援の前提

(1) 意思決定支援の前提

① 日常の診療の中でコミュニケーションを図り、意思決定の前提となる様々な情報を収集します。

② 医師と本人の信頼関係を構築するために、日常から誠意ある診療を行います。

③ アドバンスケアプランニング(人生会議)の基本通り、本人を主体に、そのご家族や近しい人、医療・ケアチームで繰り返し話し合いを行うプロセスを尊重します。

(2) 意思決定支援に際して

① 意思形成のために必要かつ十分な情報提供を行い、本人の大事にしてきたこと、
大切に思うことを理解した上で、本人の決定を優先した医療を提供します。

② 本人のこれまでの人生に敬意を払い、相互の信頼を得るための努力をします。

③ 本人が考えたくない、話したくないということも含めて、本人の意思を尊重します。

④ 病状の変化に迅速に対応するために、病状に応じた適切な医療とケアを提供します。

⑤ 暮らしのニーズの変化をアセスメントし、継続的な共同意思決定を行います。

人生の最終段階において

(3) 人生の最終段階において

① 話し合いに基づく本人による意思決定を実現するため、多職種で協働しながら人生の最終段階における医療を提供します。

② 人生の最終段階における医療行為の選択、医療内容の変更、医療行為の中止等は、本人の大事にしてきたこと、大切に思うことを尊重しつつ、多職種の専門性を有した医療従事者から構成される医療・ケアチームにより、医学的妥当性を基に慎重に判断します。

③ 医療・ケアチームにより、可能な限り苦痛や不安、その他不快な症状を十分に緩和し、本人ならびに家族等の精神的・社会的な援助も含めた総合的な医療およびケアを行います。

3. 本人の意思決定支援をした上での本人の意思確認

本人の意思決定能力は個々人により違いがあります。
私たちが支援することで、その能力を高めることが可能な場合もあります。
意思決定能力に違いがあっても、私たちがまず可能な意思決定支援をします。

本人の意思の確認が出来る場合

(A) 本人の意思の確認が出来る場合

① 専門的な医学的検討を踏まえ、説明と同意(インフォームドコンセント)に基づく患者の意思決定を基本とし、専門職で構成される医療・ケアチームとして意思決定支援を行います。

② 治療方針の決定に際し、患者と医療・ケアチームが十分な話し合いを行い、患者が意思決定を行います。

③ 時間の経過、病状の変化、医学的評価の変更に応じて、また患者の意思が変化するものであることに留意して、その都度説明して本人の意思の再確認を行います。

④ このプロセスは、患者の意向をくみ、家族等にも情報を共有します。

(B) 本人の意思の確認ができない場合

① 家族が本人の意思を推定できる場合には、その推定意思を尊重し、本人にとっての最善の治療方針とることを基本にします。
※なお、本人が意思を伝えられない状況になった場合に備えて、特定の家族等を自らの意思を推定するものとして、あらかじめ確認しておくことは望ましい。

② 家族等が本人の意思を推定できない場合には、本人にとって何が最善であるかについて家族等と十分に話し合い、本人にとっての最善の治療方針をとることを基本とします。

② 家族がいない場合および家族等が判断を医療・ケアチームに委ねる場合には、医学的妥当性に基づき、本人にとっての最善の治療方針をとることを基本とします。

複数の専門家からなる
「話し合いの場」の設置

(C) 複数の専門家からなる
「話し合いの場」の設置

治療方針の決定に際し、下記の場合には複数の専門家からなる「話し合いの場」を別途設置します。専門家は医療・ケアチーム以外の者を加え、示された検討結果および助言に従って療養の方向性を決定します。

① 医療・ケアチームの中で、本人の病態等により医療・ケアの内容の決定が困難な場合

② 本人・家族等との話し合いの中で、妥当な医療・ケア内容の合意が得られない場合

③ 家族等の中で意見がまとまらない場合や、医療従事者との話し合いで、妥当な医療・ケア内容の合意が得られない場合

4. まとめ

意思決定においては、正解はなく、各人の多様な意思を尊重しながら支援していくということに留意しなければなりません。

医療従事者の価値観を押しつけることはせず、本人の意思を尊重しながら、対等な立場で共同して意思決定を合成し、誰しもが迎える「死」を少しでも納得できる者に近づけるよう努めます。

2022年8月31日
<参考文献>
一般社団法人 全国在宅療養支援医協会 作成 日本在宅ケアアライアンス 監修 モデル指針2022

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